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3月16日見張り番
もうすぐ私たちの家が完成する。
もちろん初めてのマイホーム。
パパはこれから35年という長いローンを背負うわけだけど、それが終わるころには、もうすっかりお爺さんだよね。
サツキもみゆきも、そのころにはさすがにおばちゃんになっていて…ちゃんと結婚できてるよね。
正直言えば、私は本当はマイホームなんてどうでもよかった。
パパと二人の娘がアツくなっていたんだけど、でも、そんな姿を見ているのもすごく楽しかったかな。
でもね、家の設計図や模型とか見ていたら、ふと思った。
歳をとったときに大きな家の大きな部屋で、娘たちや、その旦那さんとか、孫たちに囲まれていたいなって。
「おばあちゃん、おばあちゃん」ってみんなから声をかけられて、私はとっても可愛らしい年寄りで、歯のない口元をもごもごさせながら、ただニコニコみんなの顔を見てる。
そんな光景が目に浮かんできて、私も「パパがんばって!」って背中をたたいちゃった。
35年か…。私や家族がどんな風になってるかなんて、まったく想像もつかないくらい、とてつもなく長い時間…だよね。
週末ごとに、建築中の家を見に行くのが楽しみで、家族みんなで車に乗って約1時間かけてやってきて、「ああ、もうこんなにできたんだ」って。
こういうときがイチバン楽しい。
夢とか恋とかって、手に入るまでがイチバン楽しいよね。
だって、ほら、旅行もね、実際に行くまでの、あれこれ計画とかしている時間がイチバン楽しかったりするもんね。
で、今日、リビングになるはずのところあたりの基礎の上で眠る猫ちゃんを発見!
娘たちがいっせいに
「アー! 猫ちゃん、先に住んじゃってずるいよぉ」とか、「そこは私たちの家だよぉ」だとか口々にいってるんだけど、もちろん猫ちゃんは全く動じない。
そんな娘たちの姿を、パパも余裕の態度で見ていて、ああ、この人ってこういうときに、こんな柔らかな顔をするんだ、なんて大発見しちゃったら、なんかすごくあたたかいものが胸の中にあふれてきた。
「いいじゃない。猫ちゃんが、工事中はずっと私たちの代わりに見張り番してくれてるんだよ。ねずみとかゴキブリとか来ないように」
なんていって娘たちを納得させた私も、やっぱり少し気持ちに余裕があるみたい。
「じゃあ、しっかり見張っててね!」
そんな娘の声にもまったく反応を示さない猫ちゃん。
引っ越してきてもよろしくね。
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